隅田 昭のエンタメーゼ

穂高健一氏スペシャルインタビュー ②作品に対するこだわり

隅:隅田昭
穂:穂高健一氏


隅:先生のキャラクターや作品には、ある種のこだわりが感じられますが。

穂:プロの道に入り、ミステリーとか、歴史小説とか、ジャンルの巾を拡げたからでしょうね。
「魅力的な人物を克明に描く」そうすれば、良い小説が生まれる。それをモットーにしています。
もう一つ、取材に裏づけされた小説を書く。ここはジャンルを問わずこだわっています。
「作家(私)ひとりの脳細胞などタカが知れている」と思い、取材を通して、多くの人の知恵・知識を作品に挿入しています。


隅:なるほど。先生は交友関係も広いですからね。

穂:交友と言えば、加入団体の会合は可能なかぎり出席します。顏見知りは財産です。
日本ペンクラブの広報委員になってから、会長以下各委員や会員と交流が多くなりました。
私の住まいに近い「昭和が残る葛飾立石」で、作家やジャーナリストを誘い、交流の輪を広げています。
私が指導する講座が終れば、受講生とは酒を飲み、作品論、文学論を語り合っています。
教わることは多いし、指導者と受講者の心の交流にしていますよ。


隅:いつも先生には、遅くまでお世話になっています。(笑)

穂:私は取材が大好き人間なのですよ。
未知の人との出会いを大切にし、心の奥底を語ってもらう。
それを作品に落とし込む。人間勉強をさせていただいています。
上下、学歴など関係なく接する、喋り方もみな同じ、フランクな性格が幸いしているのでしょうね。


隅:先生は以前に、エッセイも書かれていたとお聞きしました。

穂:世に出るのが、仲間より遅かった。
努力しても、努力しても、鳴かず飛ばず。病気は良くやっていた。
「不良品亭主」と自笑していましたよ。(笑)
これをエッセイにして「元気に百歳」10年記念号に寄稿すると、名作だと言われました。


隅:そうですか。何が幸いするか、人生なんて分からないものですね。
ところで、先生が後進の指導をする時に、特に信念とかお持ちですか。

穂:自分の文章の癖、拙劣な表現などは、独学ではなかなかわからない。
文章の欠点は見極めがつかない。それが気づくまでは何年もかかる。
受講生には『最短で判らしめてあげる』。
細かいところまで添削する。それが指導モットーです。
作品を誉めてもらいたい人には嫌がられますけどね。(笑)


隅:いつも細かい部分までご指導いただき、ほんとうに感謝しています。
先生は若いころ、純文学や現代小説を書かれていましたよね。書く上でのご苦労はなんでしたか。

穂:アマチュア作家の頃、取材申し込みは勇気がいりましたね。
「何に載るの?」という正面からの質問が最も胸に突き刺さりました。
同人誌です。その声も小さかったです。


隅:今は歴史小説に移行されましたが、ご苦労など多いでしょうね。

穂:『歴史はとかく真実が隠される。それを掘り起こすのが作家のしごとだ』
その考えのもとに、通説をくつがえす作品の創作を心がけています。
ミステリー小説は小さな証拠から犯人の嘘を見破る。歴史小説もよく似ています。
小さな疑問から、丹念に追っていけば、歴史上の大きな通説をくつがえすこともできます。
歩き疲れた頃、歴史的な物証が見つかると、作家冥利に思います。


隅:僕もこれから実力がついたら、ぜひ挑戦したいと思います。
今時点で先生が取り組んでいる、作品やテーマなどがあれば教えてください。

穂:福島原発事故による、「帰宅困難者たちの家族破壊」をテーマにしてしっかり書きたいです。
折々、福島に足を運んでいます。


⇒③作品に係るエピソード

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