隅田 昭のエンタメーゼ

穂高健一先生の出版記念会に、かつしかPPクラブの会員とOBも参加


年に4回ほど行われる作品発表の例会で、いつも的確なアドバイスをしていただく、
講師である穂高健一先生の出版記念会が、立石の居酒屋「あおば」で開催され、
かつしかPPクラブの会員やOBも、多くが参加をさせていただきました。




折しも葛飾図書館では、私たちやOBの制作した小冊子が一般公開されていますが、
開催されたのはちょうど中日に当たる、6月15日のハナキン(死語でしょうか?)です。
午後7時からはじまった即席の会場には、あふれるばかりの来客が、
日頃お世話になっている穂高先生を囲み、酒を酌み交わしています。

まず驚いたのは、日本ペンクラブ会長の吉岡忍先生や、会の発起人である出久根達郎先生、
それに、元朝日新聞論説委員の轡田(くつわだ)隆史先生をはじめとした、
そうそうたる顔ぶれでした。
また、出版に尽力された西元社長や渡辺社長、それに大日本印刷のご担当の方など、
普段お忙しい来賓もところ狭しと席を埋め、積極的に先生と話されておられました。

強烈な個性と豊富な見識に圧倒されてしまい、カメラを持つ手も震えてしまいます。
私たちはまるで借りてきた子ネコのごとく、酒場の片隅に固まって呑んでいました。




すると見かねた穂高先生が、例会のようにやさしく接していただき、あたたかい声を掛けてくださいます。

「きょうは出版記念に名を借りた、単なる飲み会ですよ。楽しく過ごすために、わけ隔てなく席を囲みましょう」

私たちはほっと胸をなで下ろし、お酒の力を借りて緊張も和らぎ、取材とおなじ気分で来客と接していきます。

ベテランの文筆家が、芥川龍之介や川端康成のこぼれ話をわかりやすく解説してくださいます。
とても高名な作家さんが、若いころ日本や世界を放浪したときの恋や酒の話に花を咲かせます。
気さくなある先生も明治や大正に活躍した、名もなき庶民の武勇伝を聞かせてくださいました。




そんな盛りあがる宴席でOBの斉藤さんが、手作りの水ようかんケーキ(あっているかな?)
を差し入れてくださると、海千山千の先生方も頬をゆるめ、
われ先にと指を伸ばし、なかには両手を使ってほお張るツワモノも現れました。
穂高先生もそうですが、著名な作家の皆さんって、
紳士と少年が体に同居しておられるのですね。(失礼しました!)

そして酒宴のピークは、吉岡忍先生がお声を掛けられ 、会員の秋山さんと伴って現れた
賓客の女性です。
笑顔を絶やさぬその美女は、長年にわたって穂高先生の陰になり、日向になり、
苦楽をともにされた奥さまでした。




「奥さんが辛抱したから、離婚されずに済んだのか」
「日頃呑み歩いている俺たちの当てつけだろう」
「家族を大切にして、もっと稼げる小説を書け」

容赦ないヤジと心のこもった励ましは、穂高先生がこれまでに築かれた、
作家仲間のつよい絆だと理解できます。
そして会員からも、ささやかながら色紙2枚と花束を、
先生と奥さまにプレゼントしました。
先生は恥ずかしそうに、「そんなに気を使わなくても良いのに」とつぶやき、
私たちに向かいます。

「この居酒屋はスポーツ選手の色紙ばかり貼られている。店員さんも興味ないみたいだし。
これほど素晴らしい作家が集まっているのに、写真の一枚さえ飾ってくれないんだものな。
でも君らに活躍してもらったら、何十年か後には伝説となって、
語り継がれる酒場になるかもしれないよ」


いつもより酔っていた先生が胸を張り、冷静な眼差しで話してくださった言葉が、
ふかく胸に残りました。




私たち、かつしかPPクラブ会員の筆力は、まだまだ穂高先生の足元にも及びません。
それでも、無名の私たちを招いてつくっていただいた、この貴重なご縁を心にきざみ、
先生のご期待に添えるよう、精進を重ねていこうと、改めて決意を固める夜となりました。


◆写真:郡山 利行 ◆文章:隅田 昭



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